貞山・北上・東名運河事典
ていざん・きたかみ・とうな
7-(4) 野蒜水門 のびるすいもん
所在地 東松島市野蒜
型式 プレートガーダ式鋼製マイターゲート(ステンレス製)
(幅 10.6m × 高さ 7.5m × 2枚)
本体 長さ 15.3m 水路幅 17.5m 高さ 7.5m
開閉動力 ユニット一体型油圧シリンダー、左右各1基
開閉速度 全開 ←→ 全閉 30分
扉体重量 107トン(2枚合計)
■野蒜水門の仕組み
水門はゲートを上に引き上げるのが一般的です。しかしこの形式では、船舶が通航するには背の高い構造となり、景観を損ねるとともに工事費が高いという理由から採用されませんでした。
この方式はゲートを観音開きに開閉するもので、堤防の高さより上に構造物を必要としません。またゲート保守のための管理橋も必要ありません。こうしたことから景観にも配慮し、コスト縮減も図られました。
従来の形式では、油タンク、油圧ポンプなどの機器が単品で配置され、油圧配管の工事も行うため、工事費が掛かりました。
この形式は油圧シリンダーに油タンク、油圧ポンプなどの機器が一体化された新技術で検査も容易となり、信頼性が向上しました。 また油圧配管もこのユニットに組み込まれるため、コスト縮減につながりました。
◆ レンガ
この水門に使用しているレンガは、凍害による劣化を防止するため”焼き”の温度を上げた含水率の低いレンガ(含水率5%以下、1200℃~1300℃で達成)です、あえて色を変え、一部コブつきのレンガにするとともに、わざと大きな容器の中で回転させ角を落としています。レンガを縦に並べた装飾は、野蒜築港跡の新鳴瀬川レンガ橋台にならったものです。レンガの基本的な配列はイギリス積みといい、大きな強度を必要とする土木構造物に使われる積み方です。
また、目地は白セメントを使用し、レンガという素材が浮かび上がるよう配慮しました。
こうした工夫で、野蒜の歴史を感じさせ、大きな壁面でも凹凸のある表情となっています。
◆コーナーストーン
レンガ構造でも角部は補強のため石材が使われることが多いため、角石を設置しています。
石材としては耐久性に富んだ白御影石(花崗岩)を使用しました。国会議事堂に使われているものと同じです。
◆ゲート等の塗装
レンガの色との調和を考慮し、日本の伝統色から深みのある緑色で、松や杉等の常緑樹の緑である「千歳緑(せんざいみどり)」を選びました。上部の転落防止柵は目立たないようにしています。
※出 典:パンフレット『地域の暮らしに安全・安心を 野蒜水門』 から抜粋掲載
資料提供:国土交通省東北地方整備局北上川下流河川事務所 ⇒ こちら